また制作者側の事実としては、「わかった気になる」動画の方が再生されやすい傾向にあります。簡易的で、頭を使わずに視聴できる動画です。視聴者には流れるように頭に情報が入りますが、考えるために立ち止まることがないので、動画を見終わった後の記憶には残りにくいのです。YouTubeは、勉強のきっかけや補助的な役割を果たすことは否みませんが、勉強になるとは口が裂けても言えません。本や図鑑や論文などの文字から頭に入れる、考える作業が勉強です。考えることを排除した動画は、勉強にはなりません。
自分が見た動画の中で、「ためになった」「勉強になった」と思うものがあれば、どこがどう勉強になったのか、動画の内容の要約やまとめをする作業をすることをオススメします。動画で得た情報は覚えやすく忘れやすいので、言語化して、頭に入れた情報を整頓する練習をします。これがスムーズにできない場合は、動画の内容が頭に入っていないことになります。
情報の量は、圧倒的に本の方が多いです。私は現在生き物に関するアニメを制作していますが、参考にする文献は3~5冊で、その中で設定として使える情報は2~3項です。アニメ全体で参考にする文献は100冊を超えています。かなりの量の情報を圧縮して簡易化して動画を制作しています。その方が再生されるからです。もし、動画で興味を持った事柄があったのなら、本や図鑑などの文献を読んでほしいと思っています。「勉強になる」と思われる動画を制作するYouTuberたちは、情報をかみくだいて、わかりやすく、面白くすることに精力を注いでいます。ただ、その動画だけで事象の全てを理解することは不可能だとも思っています。
学校の勉強は役に立たない、と言う方も時々いますが、学校の勉強の役割はその知識を使うことよりも、頭に情報を入れて整頓する練習が主です。これをおろそかにすると、自分で物事を調べて理解するチカラがなくなってしまいます。情報化社会の中で、間違った情報をうのみにしてしまう可能性が高まります。子供たちには本や図鑑や教科書を読んでもらいたいです。YouTubeは確かに気軽に情報を得られますが、あくまでも勉強を補完する程度の役割で、主軸にするのは危険だと思っています。