


今もまだ残る古き良き店を訪ねる連載「昭和な名店」。今回は有楽町の「バーデンバーデン」。
【写真】店は高架下。ビール樽とドイツ国旗を見ただけで、喉が鳴る
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ジョッキの泡はきめ細かく、なかなか消えない。注ぎ方の妙のおかげで、ミュンヘンの人気ビール「ホフブロイハウス」のうまさを存分に堪能できる。
JR有楽町駅そばの高架下。穴倉の趣も感じる店で、2代目店主の曽根崎武吉さんが語る。
「親父は最晩年でも病床で日本酒を飲むくらいの酒好きでした。楽しく飲める空間を提供したくて、始めたのでしょう」
初代の武男さんは大手証券会社を辞め、1975年に通信販売などを行う会社を設立。5年後にレストランを開いた。店名となったバーデンバーデンはドイツ南部の小都市で、温泉とカジノの街として知られる。武男さんはよく訪ね、市長とも親交があったという。
武男さんが2010年に亡くなり、武吉さんは高校教師を辞して16年から店長職に。
「それまでドイツのドの字も知らなかったので、何度も通いました。醸造所直営ビアレストランで、楽しさを実感。親父はこういうものをやりたかったんだなと、目指すものが見えてきました」
全厨房スタッフを現地に派遣し、改めて勉強させた。おかげでアイスバインは劇的に味が向上。ビールと料理で、リアルなドイツを再現する。
(取材・文/本誌・菊地武顕)
「バーデンバーデン」東京都千代田区有楽町2‐1‐8/営業時間:月火17:00~22:30L.O.水木17:00~翌2:30L.O.金17:00~翌4:30L.O.土12:00~翌2:30L.O.日祝12:00~21:30L.O.祝前日 ~翌2:30L.O/定休日:年末年始のみ
※週刊朝日 2020年10月9日号