社会保険労務士の小泉正典さんが「今後いかにして、自分や家族を守っていけばいいのか」、主に社会保障の面から知っておくべき重要なお金の話をわかりやすくお伝えする連載の第11回。誰もが避けて通れない「年を取っていく」という中で、必要となる社会保障についてのお話です。
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人は皆、年を取ります。何も問題なく健康的に年を重ねられれば理想的ですが、なかなか思いどおりにはなりません。現実的には、高齢者が健康を損ねて介護の必要が出てくることも覚悟しておく必要があります。
そんなとき、家族ですべてを支えるのは、時間や労力、金銭面でも負担が非常に大きくなります。今回は、介護にまつわる社会保障について、ごく基本的なことから解説したいと思います。
若い世代の人も自分の家族に何かあったときに慌てなくて済むよう、生活を送るうえでの基礎知識として読んでおいてください。
■40歳から国民全員「介護保険」の加入者になる
まず日本の介護保障の基本となる「介護保険」について説明しておきましょう。
日本では2000年に介護保険が導入され、その後、高齢化する社会の状況に合わせて何度も制度が改正されています。これは40歳以上の国民が必ず加入する保険制度です。ただ特に目立ったアナウンスもないので40歳以上の人で給与の明細を見て初めて自分が介護保険の加入者となったことに気づいた人も少なくないかもしれません(介護保険料が控除され始めるため)。
介護保険は、必要になった際に日常的に利用することになる支援・介護サービスから介護用品の購入まで適用される社会保障で、大まかに「支援・介護に用途が限定された社会保障」と考えればいいでしょう。健康保険の3割負担と同様に介護にかかわるお金の自己負担分を支払うだけで、残りは介護保険が負担します(上限あり)。保険の財源は被保険者が支払う保険料が半分、国や自治体の税金が半分となっています。