そんな楽しさが受け入れられたのか、くちビルディング選手権は2016年以降、約50カ所で開催され、3千人以上が競技を楽しんできた。同選手権を開催できる認定トレーナー養成も進めてきたという。

 こうしたくちビルディング選手権の広がりに待ったをかけたのが、新型コロナウイルスだった。感染リスクの高いお年寄りが多く集まるイベントということもあって、3月以降は全く開催されていないという。

「みんなで集まって楽しくおしゃべりというのは、ソーシャルフレイル予防にはとてもいいこと。それができなくなってしまったのです」(清水氏)

 くちビルディング選手権のようなイベントだけではない。外出も、人が集まっての会食もままならない。お年寄りの食べる力の維持向上には、非常に厳しい状況となってしまった。

「こんなときこそ、私たちの出番ではないか。イベントという形で地域に届けられないなら、くちビルディングを直接、家に届けてしまおうと話し合いました」

「まいにち、くちビル」を実現するため、グッドネイバーズカンパニーはクラウドファンディングを実施した。6月から7月にかけて、約260万円を集めることに成功した。

 これを元手に、A4サイズの日めくりカレンダー風にカラー印刷して200施設へ発送、サイトからPDFダウンロードなど、様々な形で「まいにち、くちビル」を届けられるようにした。

 食べる力を維持向上し、将来、誤嚥性肺炎にならないためには、日々のトレーニングが重要なのだ。(五嶋正風)

週刊朝日  2020年10月16日号