林:今は「手をつないで」のほうがよしとされていますよね。
中野:だと思います。
林:そういえば、モデルの人って、モデルの人としかつき合わないんですって。ふつうのレベルの人が一人いると気をつかって面倒くさいから、同じレベルの人のほうがわかり合えて楽しいって。
中野:ああ、そうかもしれない。よく聞く話として、本人たちはぜんぜん差別してるつもりはないんだけれども、前提となる知識に差があるから近づかないというのはありますよね。
林:このあいだ宮台真司さんがおもしろいことを書いていらして、「今、こんなに格差があるのにそれがわかりづらくなっている。昔は服装や雰囲気でどの程度のレベルの人かすぐわかったのに、今はみんな同じような格好をしてスタバでコーヒーを飲んでいる。格差がわからないように仕向けられている」って。
中野:メルカリでブランドものもお安く手に入ってしまいますしね。本来重要なのは、ものだったら味とか、人だったら話してて楽しいとか、居心地がいいとか、そういうことであるはずなのに、出身校や勤めている会社とか肩書とかでみんな態度を変えるし、価値を見ますね。
林:今、大手出版社の編集者も、結婚相手を見つけようとしてけっこうマッチングアプリをやってるんです。「出会いのチャンスを広げたい」って。マッチングアプリって出身校とかいろいろ書き込むわけでしょう。ブランドで見られることにあまり抵抗がない人が増えてるのかなと思う。私だったら知らない人に自分をさらしたくないけど。
中野:マッチングアプリってすごく流行ってるみたいで、大手商社の男の子なんかもやっているんですよね。お金にも出会いにも不自由しそうもない人たちが、出会いのプロセスを省きたいんですね。出会いにかけるコミュニケーションのコストを無駄なものだと判断していて、楽しんではいないんだなというのがよくわかりますね。
林:合コンでお金使って、はずれたときのコストを考えると、もっと手軽にやろうと思うんですね。