今後、身元や出身地を判別できる可能性のある遺骨が辺野古の埋め立てに持ち出されることに、具志堅さんは痛切な思いを抱えているのだ。

「辺野古新基地の埋め立てに使うとなると大量の土砂を持ち出すはずです。そうなると、採取した側も気づかないうちに、多くの戦争犠牲者の遺骨が混じる岩や土を持ち出すことは避けられない。私が声を上げるしかないと思いました」

 国の試算では、辺野古の埋め立て工事には岩ズリや海砂など約2018万立方メートルの土砂を採取する予定だ。設計変更の申請書によると、沖縄県内で調達可能な土砂の最大量は当初申請の670万立方メートルから、約6.7倍の4476万立方メートルに膨らんだ。このうち7割超(3160万立方メートル)が、新たに加わった糸満市や八重瀬町などの「南部地区」だ。

 県内から大量の埋め立て土砂を調達する必要が生じた背景には、沖縄県外からの土砂搬入を規制する県条例がある。国は特定外来生物の防除を義務付ける県条例が制定されたことを踏まえ、主に県内調達する方針に切り替えたのだ。

 縦覧期間に県へ寄せられた意見書は1万9000件近く(10月9日時点の速報値)。軟弱地盤への対処について防衛省はこれまでに地盤強化のため7万本超の砂杭を打つ必要があると説明しているが、申請書には調査データに基づく軟弱地盤の面積や深さ、海底に打ち込む砂杭の本数や半径、間隔などの詳細な記述がないなど、ほかにもさまざまな問題が指摘されている。

 具志堅さんはこうした意見の一つとして埋没することのないよう玉城デニー知事に面談を申し入れ、本島南部の土砂採取を認めないよう直接要請するという。

 具志堅さんは「沖縄だけの問題ではない」とも強調する。

「沖縄には、全国から兵士として送り出された人たちの遺骨が今なお残されています。辺野古新基地建設への賛否とは別に、せめて本島南部の土砂を使うのは止めるよう、全国のご遺族の方たちも一緒に声を上げてほしい」

 県は意見書や名護市などの意見を踏まえ、年明け以降に設計変更申請の可否を判断する見通しだ。(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年10月19日号に加筆

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