一方、安倍首相としては、いずれも米国の要請で、特に集団的自衛権の行使について、米国から「これを認めなければ日米同盟は持続できない」と強く迫られていて、何としてもこれらの法案を採決しなければならなかった。そうした背景から、異を唱える6人の任命を認めたがらなかったのではないか。

 それに、7日付の朝日新聞によれば、2017年秋の会員交代の際には、当時学術会議の会長だった大西隆・東大名誉教授が官邸に求められて、選考の最終段階で候補に残る数人を加えた110人超の名簿を杉田和博官房副長官に事前に示し、最終的に学術会議が希望する105人が安倍首相に任命されたことが判明している。

 ところが、17年10月から今年9月まで会長を務めた山極寿一・京大前総長は、半数交代の際に官邸への事前説明やポストの数を超える名簿提出をしなかったのである。

 おそらく、安倍首相が6人を任命しない意思を固めていて、後継の菅首相は安倍氏の意思を拒めなかったのだろう。

 だが、今回の一件は明らかに学問の自由、独立を侵すことになる。

 私は10月4日に菅首相と話し合ったとき、主題は別の問題であったが、学術会議の問題について、会長と会談をすべきだ、と強く求めた。それをしないと菅首相に対する国民の不信がどんどん強まる、と強調した。菅首相は「わかった。会談する」とはっきり答えた。

週刊朝日  2020年10月23日号

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

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