日本学術会議の問題が尾を引いている。ジャーナリストの田原総一朗氏は、菅義偉首相に「会長と会談すべきだ」と進言したという。
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日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人が、菅義偉首相に任命されなかったことが大きな問題となっている。
日本学術会議は、理系から文系まで日本の全分野の科学者を代表する機関として、戦後間もない1949年に発足した。根拠は日本学術会議法。科学が戦争に動員された反省から、内閣総理大臣の“所轄”で経費は国庫負担としながらも、政府から独立して職務を行う“特別の機関”と規定された。
会員は210人で、任期は6年。3年ごとに半数が交代することになっている。84年から、学会の方針を基にして学術会議が候補者を推薦し、内閣総理大臣が推薦に基づいて任命することになった。
ただし、83年に中曽根康弘首相(当時)は国会答弁で、「政府が行うのは形式的任命に過ぎない。学問の自由、独立はあくまで保障される」と述べ、学術会議の推薦を尊重する考えを示していた。
ところが今回、学術会議は8月31日に推薦する105人の名簿を安倍晋三首相(当時)に提出したのだが、9月28日に政府から届いた名簿には99人しか掲載されていなかった。そして、「任命しない理由は答えられない」との説明があったということだ(朝日新聞から)。
菅首相は、10月5日の内閣記者会のインタビューで、「任命する責任は首相にある」と述べたが、6人を任命しなかった理由については「個別の人事に関することについてコメントは控えたい」とした。
任命されなかった6人は、安倍政権の時代に、安全保障関連法や特定秘密保護法、そして「共謀罪」法などに批判的立場を取っていた。
しかし、この3法には憲法学者や有識者、そしてメディアの多くが反対していて、6人は決して異質な存在ではなかった。