古来、日本人は温泉に親しんできた。病の治癒を目的とした「湯治」も鎌倉時代にすでにあったと記録にある。近年は、“温泉宿で人間ドック”という、観光と医療をドッキングした新しい湯治のスタイルも生まれつつあるという。温泉宿で受けられる人間ドックの魅力を探った。
岡山県北部の真庭市にある湯原温泉郷。21軒の温泉宿が湯原温泉病院と提携していて、1泊2日で人間ドックが受けられる「湯けむりドック」を、2004年にスタートさせた。
人間ドックで気が滅入るのが胃のバリウム検査だが、同院では、血液検査で診断するABC検査を取り入れている。前日の晩からの絶食や、バリウムと下剤の服用は不要だ。同院の野村修一院長はこう話す。
「生涯現役でいるためには早期発見、早期治療が欠かせません。『仕事を休んでつらい思いをする』のではなく、『温泉旅行のついでに調べておく』ぐらいの気軽さがあると、健康や人間ドックも受けやすいですよね。敷居を低くするように努めています」
基本プランで受けられるのは一般的な身体測定、血液検査に加え、心電図、胸部レントゲン、ピロリ菌感染の有無、内臓脂肪量など多岐にわたる。希望すれば直腸がんや乳がんの検査も受けられる。別料金で、動脈硬化やがんについてさらに詳細に調べることも可能だ。
検査は午後1時から始まり約2時間で終了。結果は、判定に時間がかかるいくつかの項目を除いて、約1時間で明らかになる。希望すれば、同院の温泉プールやトレーニングマシーンで運動の指導も受けられる。
※週刊朝日 2013年1月25日号