当初は「中国の夢、憲政の夢」という社説を用意した「南方週末」 (c)朝日新聞社 @@写禁
当初は「中国の夢、憲政の夢」という社説を用意した「南方週末」 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 独自の調査報道や政治改革を訴える論調で人気のある、中国の週刊新聞「南方週末」で起きた“社説改竄”問題。1月3日付の新年特別号で「憲政実現」を求める社説を掲載する予定だったが、直前になって党宣伝部が編集長らに「中華民族の復興調」の内容に書き換えるよう命じた。それを知った記者たちが反発。昨年5月に国営新華社通信副社長から転任してきた宣伝部長の辞任を求めて立ち上がった。

 この「反乱」を鎮圧するため、当局は党機関紙・人民日報系の「環球時報」の社説を転載するよう各紙に指示。「欧米ですらトップメディアは政府批判を公にはしない。中国でそんなことをしたら負け組になる」といった内容だったため、一部メディアが転載を拒否するなど、騒ぎはさらに広がった。

 それでも、今回の事件は「言論の自由への一穴にはならない」というのが専門家たちの見解だ。

 全国で2千近くある新聞や、雑誌、テレビ、ラジオはすべて、国か省、大規模市の機関紙か、当局の機関の一つという位置づけになっている。民間人が新聞社を立ち上げるのは不可能で、民放も存在しない。

 中国で13年間、雑誌の編集に携わった北海道大学大学院の西茹(シール―)准教授(中国メディア論)は、規制の実態をこう明かす。

「当局は従順度によってメディアをランク分けし、ブラックリストに載ったメディアは必ず事前検閲を受ける。今回の南方週末がそうでした。事前検閲のないメディアも社内で絶えず自主規制を求められ、当局の事後検閲を受けます」

週刊朝日 2013年2月1日号