これに対して区の担当者は、
「保健衛生費がゼロでも一概に不正とはいえない」
「区としてやるべきことはやっている。こちらの法人関係も書類や会計チェックをしている。特段、問題は見受けられない」
と言い切るのだった。
一連の暖簾に腕押しのような答弁は、業界では「すれ違い答弁」とも言われる。ある役人は、
「人件費比率が低いこと、かけるべきコストを削って儲けている実態があることを議会で認めてしまえば、議員からすぐに対処するよう言われ、事業者を選んだ責任まで問われかねない。それを避けようとするから、まともな答弁を用意できなくなる」
と、内実を語る。
品川・生活者ネットワークでは、品川区独自に守るべき保育従事者の給与割合を設定し、それを下回った場合は参入事業者に何等かのペナルティを科すことを提言している。子育て真っ最中で、保育園を利用しながら議員活動している田中区議は、筆者の取材にこう話した。
「区の答弁からは子どもを守ろうとする姿勢が見えず、事業者を向いていた。厳しく指導して撤退されると困ると思うのかもしれないが、それは大人の都合です。今は、保育の質を確保できないまま保育園の数ばかりを増やし続けている状態。まずは、客観的なデータの公開が必要です。データがあれば、保育士や保護者がもっと声をあげていける。今後も追及していくつもりです」
今後の区の対応を注視したい。
(小林美希)
※週刊朝日オンライン限定記事