週刊朝日は9月18日号で、保育士の人件費を低く抑えて利益ばかりを追求する「ブラック保育園」が横行している実態をレポートした。
その時とりあげたXグループは、ここ数年、都内で保育園を次々と開設して急成長を遂げた企業。だがその裏では、コロナ禍で保育士の収入が減ることがないよう運営費を満額支給した国の政策を“悪用”し、一部の保育スタッフをシフトから外して「無給状態」に追い込みながら、利益を得ようとしていた。
この問題は、会社の方針に疑問を覚えた園長が労働組合に入って闘った結果、スタッフ全員の休業補償を満額勝ち取ることで一応は解決した。だが、そもそもこうしたことが起きる背景には、保育士たちの給与が低すぎ、多くの保育園が「ブラック職場」と化している実態がある。本誌報道も後押しし、10月2日と6日の2日間にわたって、この問題が品川区議会で取り上げられた。
区議会で質問に立ったのは、品川・生活者ネットワークの田中さやか区議と吉田ゆみこ区議の2人。田中区議は、取材に対しこう語った。
「保育の質と保育士の処遇改善は切り離せないのに、今の保育士の待遇は悪すぎます。各保育園の収入に占める保育従事者の給与比率や運営費の支出内容を区として公表すべきです。このことは2年ほど前から議会で提案してきましたが、区には現状を改善する意志が感じられない。本気で保育環境を守ろうとする姿勢があるのか。今回、区の監督責任について追及しました」
そもそも、保育園の運営にあてられる「委託費」は、税金と保護者の支払う保険料を原資として、市町村を通して各園に渡される。税金が入っているため、好き勝手に使っていいものではない。
今回、田中区議と吉田区議は区内の株式会社が運営する認可保育園の財務情報について調べ、保育従事者の給与比率や保育材料費などの支出状況をチェックした。その結果、園の収入のうち保育従事者の給与に当てられる比率は平均36.9%。国が想定する人件費比率8割と比べると相当低い。Xグループと他数社の給与比率は20%台で、区の平均から比べてもさらに低かった。