その状況が、19年4月にアニメが放送されたことで一変したという。堀井さんが続ける。

「アニメーターたちの深い愛情を感じました。一つ一つのシーンの描き方がものすごく丁寧で綺麗だし、血が流れたり首が落ちる様子もしっかりリアルに描かれています。アニメのスタッフが『私たちの力で鬼滅を多くの人に認めさせよう』という思いを持って作ったと伝わってきます。原作に余計なものは足さず、わかりにくい部分について補足をしてくれたので、世界観を深めてくれました。マンガの方がこれから最後の戦いで一気に盛り上がっていこうという時期に、アニメの放送が重なったんです。従来のマンガファン、アニメから入ったファン。この相乗効果が出たんだと思います」

 周囲の人の反応も違ってきた。

「僕が買ったばかりの『ジャンプ』を持っていると、マン研の連中が『貸して下さい。「鬼滅」だけ読ませてください』と言ってくるようになったんですよ。そういえば昔、同じようなことがありました。『あしたのジョー』の最後の頃。『少年マガジン』を持って京阪電車に乗っていたら、知らないおじさんが『ジョーがどうなったのか、見せてくれへんか』と声をかけてきたんです。『あしたのジョー』と同じような社会現象になったと思います」

「鬼滅」のファンは、日本だけにとどまらない。

 ロサンゼルス在住のジャーナリスト・千歳香奈子さんの説明。

「こちらでは『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba』というタイトルで英語版も出版されており、アニメはNetflix、Hulu、Amazonで昨年から配信されている他、テレビでも19年10月からカートゥーン・ネットワーク(アニメ専門チャンネル)で英語吹き替え版が全米放送されて人気です。アニメのシーズン2の放送を期待する声も多く出ています」

 それだけに、今回のヒットはアメリカでも大きな話題だ。

「ロサンゼルスの映画館はもう半年以上閉鎖されたままですし、他の地域でも映画館の7割ほどが営業を再開したとはいえ、配給会社は新作映画の公開を見送っています。『ニューズウィーク』をはじめ、娯楽誌『バラエティ』、経済誌『フォーブス』など多くのメディアが、アメリカの現状と比較する形で『鬼滅の刃』の大ヒットを取り上げました。『バラエティ』は21年初旬に映画版のアメリカ公開が決まったと伝え、ファンの間では盛り上がっているようです」(千歳さん)

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