11月の米大統領選挙が近づく中、発表された世論調査機関の支持率平均は10月13日現在、バイデン氏がリード。だが2016年の選挙戦を踏まえると、トランプ氏の劣勢からの当選を踏まえるとどこまで信用できるのか。AERA 2020年10月26日号から。
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「郊外に住む女性たち、お願いだから、私のことを好きになってくれるか?」
共和党候補のトランプ大統領が東部ペンシルベニア州ジョンズタウンで10月13日に開かれた選挙集会でこう言うと、参加者たちが歓声を上げた。
「今は、親切に接している暇なんかない。彼女らは私を好きになるべきだ。(中略)なぜなら、私はあなたたちのひどい隣近所を(犯罪などから)救ったからだ」
発言には、トランプ陣営の焦りが見え隠れする。郊外に住む女性の多数が、ライバルの民主党候補、バイデン前副大統領に肩入れしているからだ。教育機関の「オール・イン・トゥギャザー」などが9月に発表した調査結果によると、郊外に住む女性の55%がバイデン氏に投票すると答え、トランプ氏の41%を大きく上回った。一方、男性のバイデン氏支持者は43%で、トランプ氏が50%と、男女間で大きな差ができている。女性がトランプ氏を支持しないのは、「コミュニティーの安全が損なわれた」というのが大きな理由だ。
■入手難しい薬を投与
トランプ氏は10月2日、新型コロナウイルス検査で陽性になったと発表した。首都ワシントン郊外のウォルター・リード陸軍病院に入院したものの、治療半ばで退院し、ツイッターに「新型コロナを恐れるな」と投稿。そして自己隔離期間の14日間が終わる前から、連日のように選挙イベントを開いている。同月10日にはホワイトハウスで素早い復帰を喧伝(けんでん)し、12日にフロリダ州、13日にペンシルベニア州と激戦州に飛んだ。
9日までに側近や関係者の約30人が新型コロナに感染し、トランプ氏とホワイトハウスはまさに「スーパー・スプレッダー(超感染拡大者)」と言える。政権の危機管理のなさに加え、トランプ氏には、市民には手に入らない許認可前の米製薬大手リジェネロンが開発した抗体治療薬などが投与された。米国では日々4万~5万人が新規に感染し、死亡者の累計は21万5千人に上る。患者や犠牲者の家族が、喉から手が出るほど欲するであろうその薬品は現在、手には入らない。