アルジェリアのテロ事件で注目を集めるようになった、アフリカの国々。中でも、紛争が頻発する危険地帯に駐在する日本人は、不測の事態に備え、さまざまな対策をしている。
危機管理が専門の国際政治学者、首藤(すとう)信彦・前衆院議員(67)は1971~72年、伊藤忠商事の駐在員としてアルジェリアの首都アルジェに住み、ガス施設建設に携わった。首藤氏も、駐在当時のアルジェリアは安定していたが、「安全のためには『イスラムらしさ』を身につけることが必要で、何年間も長期滞在する技術者の中にはイスラム教に改宗してから赴任した人もいましたね」と話す。後に紛争解決を目指すNGOを作ってイラクやパレスチナなどイスラム圏の紛争地を訪ねた際には、事前に日本にいるイマーム(イスラム指導者)に「首藤は異教徒でもイスラムの友人だ」という紹介状を書いてもらい、肌身離さず持ち歩いていたという。
80~90年代、アルジェに計7年間駐在し、産業プラント製造や鉄道などのインフラ整備に携わった商社OBの男性(65)は、90年代前半の「アルジェリア内戦」を経験した。
10年近い戦闘で約20万人が死亡したといわれ、100人以上が死傷するアルジェ空港爆破事件も起きた。
「軍の基地の隣のアパートに住んでいたのですが、原理主義の集団が軍の施設を襲って武器を奪う事件があった。夜中に銃撃戦になって、弾が飛んでいる様子がはっきり見えました」
携帯電話が普及し始めた時期だったが、「ゲリラに通話を盗聴され、危険だ」として、所持を禁止されていたという。
※AERA 2013年2月4日号