
「唐揚げ」を集客の武器に、売り上げ好調。食べ放題は、最初に1人あたり3個ずつ提供し、その後は追加の注文を受け付ける仕組み。ランチタイムも750円で「鶏唐揚げ食べ放題定食」を提供している(撮影/写真部・松永卓也)

店はわずか2.5つ坪。客の7割が女性で、10代、20代が中心。お好みで、マヨネーズやスイートチリ、チョコレートソースなども自由にトッピングできる(撮影/村上宗一郎)
街に出てビックリ。専門店に、食べ放題の居酒屋…。今、東京は唐揚げブームともいえる状態だ。
東京・渋谷のセンター街のド真ん中。寒いなか、テークアウト唐揚げ専門店「金のとりから渋谷センター街店」の前は、若い女の子たちの人だかり。
「熱々でおいしいです」
と、20歳の女子学生。友だちと買い物に来てランチも済ませたが、小腹が空いたのだという。別の若いカップルは、無言でハフハフかぶりついていた。
中津市の名店として知られ、09年5月に東京へ初進出し、ブームの一翼を担ったのが、テークアウト専門の「もり山 学芸大学店」(東京・目黒)だ。
店は東急東横線学芸大学駅の東口に延びる商店街の一角にあり、広さ6坪ほど。平日の夕方6時過ぎに訪ねると、客が次から次へと来る。自転車で隣駅から買いに来た主婦(60)は、
「主人は鶏肉が嫌いなのに、ここの唐揚げだけは食べるの。ジューシーで、しっかり味もついているわ」
代表の木野利裕さん(59)によれば、味の決め手は「秘伝のタレ」。塩をベースに、ショウガや唐辛子など数種類の天然調味料とニンニクを使っていて、中津市の本店から取り寄せている。このタレに肉を一晩なじませ、注文が入ってから揚げる。カラッと揚がるまで、待つこと約6分。
注目すべきは専門店ばかりじゃない。とどめは、100円で唐揚げの食べ放題ができる居酒屋だ。東京のJR神田駅から3分ほど歩いたビルの地下1階にある「THE 有鳥天酒場」でやっている。高温の油で2度揚げするというその唐揚げは、衣はカリッとして中はジューシーで、ビールも進む、進む。これまでの唐揚げ最高記録は、43個(!)だという。でも、100円で利益が出るのか。
「販促の手段です」と代表の戸張賢治さん(39)。
当然、客が唐揚げだけ食べて帰れば利益にならない。そこで、別に飲み物と料理を1品ずつ注文する仕組みをとっている。
3年前の開店当初、経営は半年近く赤字が続いていた。そこに東日本大震災が起き、売り上げはさらにダウン。そんな崖っぷち状態で閃(ひらめ)いたのが、唐揚げの食べ放題だった。
ツイッターなどで評判が広がり、今では一日1千個を超える勢いで出る。
※AERA 2013年2月4日号