厳しそうな場合は、手ごろな家に住み替えて生活コストを下げるなど、早めに対策したい。自宅はあるものの貯蓄がないという場合は、自宅を担保に毎月一定額を銀行から借り、居住者の死後に自宅を売却して返済する「リバースモーゲージ」制度を検討してみてもいいだろう。

 夫が個人事業主などで、厚生年金保険に加入していなかった場合、状況はさらにシビアだ。夫が死亡した時点で基礎年金はなくなるため、妻は自身の国民年金しか収入がなくなる。

「一定の条件を満たせば、寡婦年金や死亡一時金を受け取ることもできます。しかし、寡婦年金が支給されるのは妻が60~65歳の間だけで、支給額は夫の基礎年金の75%と少ないですし、死亡一時金は満額で32万円です。いずれも長期的に生活を支える収入にはなりません」(井戸さん)

 夫が自営の場合は、生前にできるだけ貯蓄をしておくか、少なくとも2千万円以上の死亡保険金をかけておいたほうが安心だという。高齢期までに資産形成ができなかった場合は、国民年金の繰り下げ受給を検討するのも手だ。

 一方で、収入だけでなく、支出の面にも目を光らせておきたい。特に要注意なのが、「隠れ不動産」だ。

 井戸さんによると、知らない間に、夫が実家から山の所有権を相続していたことが死後に発覚してトラブルになった例があるという。

「これ以外にも、家族に内緒で駐車場ぐらいの小さな土地を買っていたり、空き家になった実家の土地の権利者になっていて、死後にトラブルになるケースが増えています。いずれも管理費や固定資産税を毎年払わなければなりませんし、空き家を取り壊すのにも数百万円かかる。こうした不要な『隠れ不動産』を持っていないか、生前に夫婦はともに確認しましょう」(同)

(ライター・澤田憲)

週刊朝日  2020年11月6日号より抜粋

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