■アスリートやミュージシャンも多く輩出
東洋大学の学生数は現在、3万1451人(1・2部、大学院/公式HPより)。マンモス校であるがゆえに運動部に力を入れていることも東洋大学の特徴の一つ。ロンドンオリンピックで金メダルを取り、その後プロ転身してWBAミドル級王者になった村田諒太は一時期、大学職員として働きながら現役に復帰。さらに、箱根駅伝で毎年上位に付けている陸上部や何人ものプロ野球選手を輩出している野球部なども有名だろう。
「運動部がめちゃくちゃ強いので、夢潰えたスポーツマンがお笑い界に転身している例がありますね。ティモンディの高岸さんは大学3年のときの右ひじの故障で野球を断念したそうです。また、ネルソンズの青山さんもレスリングの元日本代表選手で、芸名も『青山フォール勝ち』ですからね。東洋大出身の元アスリート芸人が今後も出てくるかもしれません」(前出の関係者)
スポーツ以外でも、東洋大学にしかないユニークな学科の存在が芸人を輩出する土壌になっているという声もある。
「もともと東洋大は仏教哲学家の井上円了が設立した哲学塾が前身です。文学部にインド哲学科という変わった学科もあり、バービーさんは同学科出身です。テレビでチベット密教について語ったりしていますが、同学科はヨガの授業があることで有名です。大学全体で哲学教育に力を入れており、理系も含め、複数の学部で取り入れています。若林さんもたまに哲学の授業の話をトークでしていたりしますよね。お笑い芸人以外でも、そのままのバンド名『BRAHMAN』(インド哲学で宇宙の根源)のボーカル・TOSHI-LOWさんや、ひたすらポジティブなロックンロールを奏でる『サンボマスター』のメンバーも東洋大出身です。こうして名前が上がって面々を見てみると、哲学的な素養がお笑いと結びついている部分もありそうです」(エンタメ情報誌の記者)
お笑い評論家で、東京大学文学部出身で哲学を専攻していたラリー遠田氏は哲学とお笑いの関係についてこう分析する。
「哲学とは、物事の根源にさかのぼって思索を深めていく学問です。お笑いというのも、突き詰めて考えると『笑いとは何か』という哲学的な問いに行き着くものであるため、両者の親和性は高いと言えるかもしれません。フワちゃんは『性善説』に興味を持って中国哲学を専攻していたと『徹子の部屋』で語っていたことがありますし、バービーさんも『人はなぜ生きるのか』ということに興味を持って、インド哲学科で仏教について学んでいたそうです。彼女たちの鋭く本質を突く思考力や頭の回転の速さは、哲学を学んだことによるものなのかもしれません。」
若林のように内省的な思索にふけるケースも、逆にフワちゃんや高岸のようにつきぬけたポジティブな芸風も哲学的な素養の果てにあるのかもしれない。そして彼らが現在のお笑い界を席巻していることをみれば、我々が心の奥底で求めているのも、哲学的な態度なのかもしれない。(黒崎さとし)