※写真はイメージです (GettyImages)
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「後悔しない特養選び」5カ条 (週刊朝日2020年11月6日号より)
「後悔しない特養選び」5カ条 (週刊朝日2020年11月6日号より)

 ともに要介護3の父(87)と母(81)がいる記者(次女)の介護ルポ第2弾。前回は両親の在宅介護を諦め、都内の特別養護老人ホーム(特養)に入れる決心をするまでの過程を伝えた。今回は特養の選び方や予想以上にかかるお金などを専門家の意見を交えながら紹介する。

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 高齢者施設の中で特養を選んだのは、入居一時金が不要など、公的施設で費用が比較的安いからだ。一方で、人気が高く、数年待ちの場合もある。2015年度から入居条件が原則「要介護3以上」と厳しくなったものの、申込数は19年度で計29万2千人(厚生労働省調べ)に上る。

 両親の場合、近隣の自治体に3月、新施設が開所した。特養に入れるかどうか決めていなかったが、先着順だったので5月に姉と一緒に見学しに行った。

 5階建てで、定員は100人余。4人部屋が中心の従来型ではなく、全室が個室タイプだ。居室の広さは約11平方メートルで、あるのは洗面台と介護ベッドだけ。テレビやタンスなどは持ち込む必要がある。

 室内にトイレがないのは気になった。だが、週2回入れる機械式浴槽は立派に見えた。晴れた日には屋上から母の好きな富士山も見える。開所まもないためか職員をあまり見かけなかったものの、見学後すぐ申し込んだ。担当者による自宅での聞き取り調査(入所前面接)を経て、8月に入所した。

 施設の選び方の注意点について、『これ1冊でわかる特別養護老人ホーム』などの著書がある特定非営利活動法人「介護保険市民オンブズマン機構大阪」の担当者は言う。

「見学時は、利用者の表情(笑顔でいるか)とか、職員と話しているときの状況をよく見ましょう」

 淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授も同じ意見だ。

「建物や設備にだまされないことです。大事なのは人がいっぱい働いているかどうか。新規オープンの施設ほど、いろんな人の寄せ集めで介護の質が安定していない場合がありますので、注意が必要です。実は新しい施設ほどスタッフの離職率も高い。見学時に『介護職員の離職率は何%ですか』と聞くと良いでしょう」

 記者には耳が痛い言葉だ。施設の新しさばかりに目を奪われていた。

 結城教授によると、離職率の全国平均は1年間で15%。20~30%に近かったり、回答があやふやだったりすれば要検討だという。また、今はコロナ禍で確認することは難しいが、地域のボランティアが頻繁に訪問しているような開放的な施設を選びたい。

「閉鎖的空間だと虐待も起こりうるからです」

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