95年に即戦力左腕と期待され、ドラフト2位で「自信を持って」プロ入りしたが、登板4試合目、5月27日のロッテ戦で堀幸一に本塁打を打たれ、初失点を喫して以来、これまでのように「怖いもの知らず」で投げることができなくなった。

 さらに97年9月25日のロッテ戦で、打球を頭に受けて脳挫傷で入院。99年にも2軍戦で打球を顎に受け骨折と、立て続けに不運に見舞われ、「ライナーが飛んでくると、“怖い”と感じるようになった」。そんな苦闘の日々のなか、2軍で通算234試合に登板し、02年9月5日のヤクルト戦ではノーヒットノーランも達成したが、1軍のマウンドでは、なぜか結果が出なかった。「1軍に上がると、2軍ではできたピッチングの持ち味が出せなかった。メンタルの問題だと思うのですが……」。

 03年も1軍で2度の先発チャンスを貰いながら、いずれも敗戦投手になり、オフに2軍投手育成コーチに就任。1軍通算成績は42試合0勝4敗、防御率5.37だった。

「2軍から1軍に上がっていく選手を誰よりも多く見てきた経験を生かし、コミュニケーションを取りながら、本人が納得するような教え方を目指したい」と指導者への第1歩を踏み出してから17年目。今では栗山英樹監督の参謀役(1軍ベンチコーチ兼投手コーチ)として、チームを支えている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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