急成長中の同社には、完全在宅勤務に移行してからも毎月新入社員が加わっている。カントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣(ふみのり)さんは「70人ほどの社員のうち20人以上は直接会ったことがない」と話す。それで人間関係は大丈夫なのか。
「違和感はありませんでした。ただチームとして仕事を進めるため、雑談を含めたコミュニケーションの機会はリモートでも重視しています」(佐賀さん)
大切にしているのは、画面越しでも密に顔を合わせること、そして雑談だ。会議や業務連絡だけでなく、1対1の雑談まで社内のやり取りはすべてZoomを使う。佐賀さん自身、会議から雑談まで1日20件近いビデオ通話を行っている。
「Zoomには、あらかじめグループをつくっておけばワンクリックでメンバーを呼び出せる機能があり、仕事でも雑談でも、その都度必要な顔ぶれで顔を合わせて話し合います。顔を見てこまめに話すことで孤独にならずに済むし、仕事を進めるうえでも必要です」
新メンバーの歓迎会は必ず行うし、社員同士のリモート飲み会は毎月の恒例行事だ。
「歓迎会や飲み会では、少人数のグループをつくる『ブレイクアウトセッション』という機能を活用しています。数人に分かれて雑談し、時間が来たらグループを組み替える。ワイワイ話し、コミュニケーションをとっています」(佐賀さん)
業務外でも積極的にコミュニケーションを図ることで、業務中も気軽に雑談でき、いい息抜きになるという。
「退勤します。お疲れ様でした。とんこつラーメンが食べたい!」
ある社員がZoomのチャット欄に書き込むと、「お疲れ様でした!」「とんこつと言えばあのお店だよね」「私は今日は味噌!」など次々に返信が付く。誕生日を迎えた社員がいれば、誰からともなく「おめでとう」の声が上がる。ただ、佐賀さんはリモートで全てが事足りるとは思っていないという。
「いい仕事をするには、一緒に汗をかいた経験や合間で発する無駄話が欠かせません。Zoomだけでコミュニケーションが済んでしまう淡泊な社会は受け入れられませんが、一通りのことをZoomで済ませれば、本当に大切なコミュニケーションに時間をとれる。オフィスに戻り、会社の仲間や大切なお客様と密なコミュニケーションが取れるのを楽しみにしています」
(編集部・川口穣、渡辺豪)
※AERA 2020年11月9日号より抜粋