単なるリアクションだけではなく、WEBコンテンツ部門による書店とのコラボ企画の報告では、宣伝担当から「次はしおりがつくれたらいいね」、通販営業担当から「QRコードをチラシに載せるときは『読み取る必然性』を高めなければ」など提案や改善案が次々に寄せられ、チャットへの書き込みは計400件に及んだ。
同社はもともと、対面でのコミュニケーションと組織づくりをなによりも重視してきた。仕事の話は一切せず雑談に終始する「雑談朝礼」、社内バーでの交流会、社長も新入社員もあだ名で呼びあうニックネーム制……。井手直行社長はリモートの世界は想定すらしていなかったと話す。
「対面が最上だと考えて疑っていなかった。リモート会議はどうしても会えない人と“やむを得ず”やるものでした」
だが状況は一変。現在は製造や出荷など一部の担当者を除いた全社員に在宅を推奨している。それでも、社員へのアンケートでは部署内のコミュニケーションについて8割以上が「すごく良い、良い」と回答した。一体なぜコミュニケーションを維持できているのだろうか。
雑談朝礼はリモートでも変わらず行い、部署横断の「シャッフル雑談朝礼」も始めた。オフィスでは「なんとなく」できていた情報共有を徹底するため、こまめにミーティングするようにもなった。井手社長は言う。
「リモートでは、リアル以上の緻密さが必要です。画面上で顔を合わせる機会を増やすだけでなく、例えば元気がないスタッフがいたら『あの会議が原因では?』といったことがわかるよう、リーダー同士が連携しあって社員をフォローしています」
■会えてない新人が20人
堀田教授が次に挙げるリモートの弊害は、「人間関係の構築が進まないこと」だ。
「コミュニケーションには目線やしぐさなど会話以外の非言語情報や、ちょっとした雑談が重要ですが、リモートでは失われがちです。何げない会話が人間関係を深め、仕事の潤滑剤になるんです」
リモートの申し子とも言えるビデオ会議ツール「Zoom」の日本法人ZVCジャパンは、3月から全社員が完全在宅勤務中。少なくとも年内は在宅勤務を続ける予定で、10月にはオフィスもいったん解約した。