「今回はとくに、10代、20代の役者さんたちと作品をつくりあげることの楽しさを感じた」と振り返る。
「『これが自分の演技』という方法論がまだ固まっていなくて、キャッチボールをしながら一緒に見つけていく。演技なのか本人なのか曖昧なところ、俳優としてこれから成長していくところを撮るのが好きなのかな、と思います」
そう話す瀬田監督は穏やかで、現場でも俳優たちは伸び伸びと演技ができるのではないかと想像する。
「カチッと固めるよりは、好きに動いていいですよ、という感じで伝えています。私自身、そんなにピリピリした感じでもないので(笑)、役者の方たちの演技を否定せず、『どう演じても間違いではないです』というスタンスでいられたらと思っています」
◎「ジオラマボーイ・パノラマガール」
東京で暮らす平凡な高校生、渋谷ハルコと真面目でおとなしい神奈川ケンイチの平行線の恋を描く。11月6日公開
■もう1本おすすめDVD「PARKS パークス」
瀬田なつき監督は、これまでも“場所”を一つの登場人物のように映し出した作品を多く発表してきた。映画「PARKS パークス」(2017年)は、井の頭公園開園100周年を記念して制作された青春映画であり、吉祥寺の街と人々の憩いの場である公園があるがままの姿で映し出されている。
ある日、吉祥寺に住む大学生・純(橋本愛)のもとに、亡き父の昔の恋人を探しているという高校生・ハル(永野芽郁)がやってくる。二人は、かつての恋人が住んでいた場所にたどり着き、ハルの父親が恋人に向けて書いたラブソングの続きをつくろうと奮闘する。
人々の日常のなかにある公園、刻まれた特別な思い出……。歴史ある場所には、訪れた人の分だけ人生が詰まっている。日の光によって変わる景色、登場人物たちが自転車に乗ったり、走ったりすることで変わっていく背景を、カメラはそのまま追い続ける。役者やスタッフが、文字通り公園のなかに溶け込むことで、生まれた作品だ。
いまでは映画やドラマで活躍する永野芽郁、石橋静河らの透明感あふれる佇まいも印象に残る。
◎「PARKS パークス」
発売元:日活 販売元:ポニーキャニオン
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2020年11月9日号