西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、リーグ優勝を決めたソフトバンクの強さに迫る。
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ソフトバンクが10月27日に、3年ぶり21度目(1リーグ時代含む)のリーグ優勝を決めた。ソフトバンクの関係者の方々には本当に敬意を表する。新型コロナウイルスの感染者がシーズン中に出るなど、例年以上に「心のタフさ」が求められたシーズンだったと思う。選手も遠征先で外出も制限され、苦しかったと思う。だが、選手たちの優勝が決まった後の笑顔を見て、そして工藤公康監督の興奮した姿を見て、私も胸が熱くなった。
本当に強かった。特に優勝争い佳境の10月は隙がなかった。今年は優勝までの111試合で実に100以上のオーダーを組んだという。打線は「絶対に動かさない軸」を置いたほうが、首脳陣も楽だし、選手が「自分の役割」というものをより明確にして戦うことができる。だが、めまぐるしく打線を組み替えた。
そこには、コンディショニングコーチも含めた綿密な打ち合わせが必要になる。誰がいい状態なのかを含めて毎日話し合ったという。その上で打順を決める。なかなか難しいことだよ。選手がどの打順になってもこなせる技術的な部分、メンタルの部分の強さを持ち合わせる必要があるし、経験も必要だ。それを持った選手がソフトバンクは多かったということ。首脳陣も信頼したということだ。
一方で強い信念も工藤監督には備わっていた。今年ブレークした栗原陵矢は、調子が下降線をたどっても使い続けた。育てながら勝つ。難しいことにもチャレンジした。世代交代を図ることは、下位チームであるほど簡単である。結果が出ているベテラン選手から若手への切り替えほど難しいことはない。ただ、長谷川勇也にしても、松田宣浩にしても、たとえスタメン起用でなくとも、ベンチで存在感を発揮した。3年連続で日本一を遂げる軍団が、昨年、一昨年と逃していたリーグ優勝へ一つとなった。その姿はテレビの画面を通じてもわかった。