当時、SNSの見せ方を教育していくスタッフマネジメントの概念はどこにも存在しなかったため、とにかく手探りだった。だが、生駒さんの施策は奏功し、SNSからの流入が寄与する形で、通販での売り上げが1日あたり1千万円を超え、通販の月間売上高は、半年間で3億円から5億円に急拡大した。
「社内でも『あのブランドだけEC比率が異常に高い』『SNSからの流入がすごいらしい』と話題になり、ようやく会社側が、SNS戦略の重要性に気付いてくれるようになった。会社のSNSに対する見方が変わるのを感じました」
その後、同社の全ブランドのSNSの統括を任され、信頼を勝ち得た生駒さん。2016年には、自撮りアドバイザーとして、『マツコの知らない世界』(TBS)に出演。2017年には『ステージを上げるSNS絶対6ルール』(文響社)を出版するなど、個人として認められるようになった。副業として始めたSNSコンサルが軌道に乗り、同年に独立した。
現在のクライアントは、エステやネイルサロン、地方自治体から100円ショップまで多岐にわたる。
「SNSコンサルタントというと、写真の撮り方やハッシュタグの付け方を教えている人と思われがちですが、見せ方のテクニックは、1割以下です。あとの9割は、コンテンツの提案や社内での理解促進、SNSをコンバージョンに結び付けるための流れ作り。SNS代行とは全く違う仕事です」
生駒さんは、今後もビジネスにおけるSNSの影響力はさらに増すと予想している。
「何をやるにしても、SNSが起点になる。多くの企業は、ホームページの仕様には予算を割くのに、なぜかSNSにはお金をかけない。でも本来、SNSこそプロフェッショナルがやらなければいけない仕事で、社内にSNSの仕事を専門に行う部隊を置かないと、うまくいかない。SNSの重要性と、そこから生まれる可能性を信じてほしいし、今後もそのための発信をしていきます」
企業内に、SNSのプロが常駐する時代が当たり前になる。生駒さんの描くビジョンは、そう遠くない時期に現実となりそうだ。(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)