「HbA1cは8.0くらいあるほうが死亡率は低いという新しいデータがあります。ですから、一気に正常値まで下げるような治療は避けるべきです」
高血糖よりも低血糖のほうが死に至ることがあり、危険だという。
「低血糖は脳にダメージを与え、意識障害を起こすので、交通事故や入浴中の事故にも遭いやすくなります。血糖値や血圧はバイタリティーにも関わり、高齢者ではむしろ数値が高めの人のほうが元気なのです」
和田氏が勤務していた病院は、高齢者医療を中心に行っている。亡くなった患者約260例を病理解剖したところ、生前、糖尿病だった人がアルツハイマー型の認知症になったのはわずか8%。糖尿病ではなかった人は28%に上った。
この場合、高齢者ということもあり、糖尿病の治療は積極的には行わなかった。そこで、和田氏が提唱しているのが「自己決定医療の勧め」だ。
「医者が患者さんに対し、フェアに説明する必要がありますが、少し寿命が短くなっても頭がシャキッとしたまま生きるか、頭がぼんやりしながら長生きするか、という選択があってもいいと思うのです」
(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2020年11月20日号より抜粋