「神様は公平だ。指導者でも特権できれいな空気はもらえない。環境保護を軽視した役人に、庶民と同じように呼吸させろ」
深刻な大気汚染が起きている中国で、中国版ツイッター「微博」上に見られる市民の訴えだ。
大気汚染の原因物質であるPM2.5は、直径が千分の2.5ミリ以下の微粒子。髪の毛の直径の40分の1ほどしかなく、通常のマスクは素通りしてしまう。排ガスや工場の煙などに含まれ、吸い込めば肺の奥や血管に入り込み、ぜんそく、心臓疾患などを発症させ、死亡リスクも高くなるとされる。
大気汚染の「公平」さは、国外にも及ぶ。PM2.5は、西からの風や高気圧、低気圧の移動に伴って、中国から日本に運ばれてくる。
九州大学応用力学研究所の竹村俊彦准教授によると、中国からの越境大気汚染は10年ほど前から顕著になっており、九州では数年前から市民レベルでも問題視されていたという。
環境省は「直ちに健康に影響はない」としているが、毎年開いている日中韓環境相会合では検討課題に挙がっている。
市民の間には不安が広がる。
福岡市のあすなろ幼稚園では2月4日から、PM2.5が基準値より高いと予報される日には園児の外遊びを控えている。1月末に、保護者から「PM2.5に気をつけてほしい」と要望があったことがきっかけ。環境省の大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」を参考にしている。柿迫(かきさこ)重正園長は言う。
「外で遊べないストレスから園児のケンカが増えるといった弊害もあります。とはいえ、どんな健康被害があるのかがよくわからないうちは、自己防衛せざるを得ないのが現状です」
※AERA 2013年2月18日号