日本全国で新型コロナウイルスの新規感染者が増加している。冬場に感染が拡大することが危惧される。気温低下による行動変容が背景にある。AERA 2020年11月23日号から。
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専門家は季節的な要因をどうみるか。東京医科大学の濱田篤郎教授(渡航医学)はこう話す。
「寒くなると飛沫感染が流行するというのは、一般的な法則としてよく指摘されることです。理化学研究所の実験のように、乾燥すると飛沫が飛びやすいということもありますが、寒さによる影響の方がより大きいと考えられます。ただ、寒さによってウイルスが生存しやすくなるというよりは、気をつけるべきは、寒さによって人の行動が変わるという点です」
寒くなると、多くの人が屋内にとどまる傾向が強くなるだろう。換気で冷気を入れるのも抵抗がある。温かいお湯が出なければ、手を洗うのもおろそかになるかもしれない。濱田教授は、こうした人の行動の変化が、感染拡大につながっているのではないかとみる。
北海道で起きていることは、これから徐々に寒さが増す他の地域でも起こるのだろうか。11月11日には、大阪や埼玉、新潟など七つの府県で感染者の過去最多を記録している。
「北海道だけでなく、すでに国内で感染は拡大し始めていて、第3波は始まっていると思われます。第1波と第2波では、欧米などと比べて感染者は多くありませんでしたから、日本にはまだ免疫を持たない感染しやすい人たちが大勢残っているということになります。その分、予防を十分に心がけてほしいのですが、国が最近、強く訴えているのは換気の必要性です」
■2段階で換気する
密集や密閉の一つの目安とされているのは、吐く息に多く含まれる二酸化炭素(CO2)の濃度だ。新型コロナ対策として日本産業衛生学会が示しているのは、濃度が1千ppm(ppmは濃度の単位)以下であれば換気状態は良く、3500ppm超は極めて悪くその部屋の使用を控えるべきだ、という指標だ。