■マンボウ肝油の歴史と使い方
私が文献を調べた限りでは、マンボウ肝油に関する知見は少なくとも江戸時代からある。マンボウ肝油は灯油や潤滑剤の代わりとして使われていたほか、打撲や切り傷の塗り薬としてもやはり昔から漁師の間で使われていたようだ。
また、マンボウの肝臓自体は昔から食されており、味噌と一緒に炒めた料理が伝統的な食べ方だ。最近では『海の癒し オーシャン・サンフィッシュ』、『マンボウハート』、『マンボウ肝油V』、『ハピネスマンボウサンQ』など、マンボウ肝油のサプリメント商品もある。
マンボウ肝油は飲めば胃潰瘍に効くとも言われていたが、ラットを用いた比較実験で本当に胃潰瘍に効く可能性を示唆した論文が発表されていた。また、日本大学の教授が『「マンボウ肝油」で心臓病を完全克服!!』という本を2002年に出版している。その本によると、マンボウ肝油にはDPA(ドコサペンタエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれており(特にDPAが豊富)、それらの複合作用によって血液がサラサラ・血流がスムーズになり、各種臓器の機能が向上し、結果として心臓病などの予防・改善に有効的であるとのこと。上述のサプリメントもマンボウ肝油はDPAが豊富であることを売りにしていた。
古来より塗り薬や飲み薬として使われてきたマンボウの肝油にはまだまだ知られざる効果がありそうだ。マンボウ肝油の医学的な効果を検証した論文は非常に少ないため、誰かさらに研究をして欲しい。
【主な参照リンク】まったりマンボウ.2002-2018.マンボウのあぶら(マンボウの利用法その(1)).マンボウが旅に出る理由.
●澤井悦郎(さわい・えつろう)
1985年生まれ。2019年度日本魚類学会論文賞受賞。著書に『マンボウのひみつ』(岩波ジュニア新書)、『マンボウは上を向いてねむるのか』(ポプラ社)。広島大学で博士号取得後も「マンボウなんでも博物館」というサークル名で個人的に同人活動・研究調査を継続中。Twitter(@manboumuseum)やYouTubeで情報発信・収集しつつ、来年以降もマンボウ研究しながら生きていくためにファンサイト「ウシマンボウ博士の秘密基地」(https://fantia.jp/fanclubs/26407)で個人や企業からの支援を急募している。