私は古来より伝わるマンボウの伝承や伝統にも興味津々な博士である。
前回、「博士の知識を丸一日独り占めにできる「レンタル博士」。その魅力と課題とは?」という記事で、無職になっても「レンタル博士」で多少は収入を得られるのではないか?という令和型ポスドクの新たな可能性を提案した。
今回は再びマンボウの話に戻って、私が実際に作ってみた「マンボウの肝油」に関する知見を紹介したい。
■今さら気になっていたマンボウの肝油
私が大学院に進学してマンボウ研究を始める前、西暦2000年代前半でマンボウについて最も詳しい情報が得られる日本語のサイトは「マンボウが旅に出る理由」だった。事実は小説よりも奇なり。サイトを見て楽しんでいた私はその後、サイト管理人の研究を引き継ぎ、ウシマンボウMola alexandriniとカクレマンボウMola tectaの学名を特定することになるのだが……その話はさておき、サイトに載っている情報の中で、今更ながら妙に気になっていたものがあった。
それが「マンボウの肝臓から作られる傷薬(マンボウ肝油)」である(詳細は記事末の参照リンクを見て欲しい)。フィールド調査でマンボウを毎日のように捌いていた時はいくらでも肝臓を入手する機会があった。しかし、当時はあまりそれに興味がなく、結局一度も作ることはなかった。
ところが、働き始めてフィールドに行けなくなるとだんだん作ってみたくなった。マンボウの漁獲地から離れるとなかなかマンボウの肝臓を入手する機会に恵まれなかったが……先日ようやく近所のスーパーでマンボウ(実際の種は不明なので属レベル)の肝臓が売られているのを発見! 購入して、早速マンボウの肝油を作ってみることにした。
■実際に作って試してみた
「マンボウのあぶら」とも称されるマンボウ肝油の作り方は簡単。フライパンでマンボウの肝臓を炒め、出てきた油を瓶に詰め、冷蔵庫で保存するだけ。これで切り傷ができた時に肝油を塗ればよく効くと言われている。
今回、私は11月7日に「ウボンマシウ博士の小さな発見チャンネル」でYouTubeライブ配信しながら、実際にマンボウの肝油を作ってみたので、その感想も交えて補足しよう。
マンボウの肝臓は油がすごい出てくるので、サラダ油などを引く必要はない。フライパンに小さく刻んだ肝臓をそのまま入れて、火を点けるだけでいい。しかし、火加減には注意が必要だ。最初、強火で炒めた時は焦げてしまい、肝油が真っ黒になって失敗した。炒めるなら弱火が良い。
私が試した中で一番良かった方法はフライパンに少し水を張り、アルミホイルで作った皿に肝臓を入れ、蓋をして蒸す方法だ。この方法だと油が飛び散らないし、フライパンに臭いもあまり付かないし、きれいなオレンジ色の肝油が回収できる。他のアドバイスとしては、炒めた時に飛び散った油が腐ると臭いので、調理した後は台所の壁も入念に掃除した方が良い。
奇しくも、数日後に指に切り傷ができてしまったので、早速マンボウ肝油を塗ってみた。数日経ったが、肝油自体はサラサラしている。切り傷に直接塗るとちょっとしみた。魚臭さと油のぬめりがあり、そのままでは他の作業が難しかったので結局すぐに水で洗い流してしまった……漁師の間では古来より塗り薬として使われているようだが、どうも塗り薬としての医学的効果はまだちゃんと検証されていないようだ。