「国民に『まだ大丈夫』というメッセージを与えている。冬の期間が長い今回は第2波を確実に上回る。キャンペーンはやめたほうがいい。これから風邪も増え多くの患者が病院に来る。医療機関に人が集まり、大きな混乱が生じる恐れが高まっています」
政府や国民の「油断」が、深刻な結果をもたらす恐れもある。
「このままでは安心してお正月を迎えることができないかもしれない」
こう語るのは、統計学を使い感染拡大の抑止について研究を進める横浜市立大の佐藤彰洋教授だ。
感染者数の今後の変化を、累計感染者数が最も多い3都府県についてシミュレーションしてもらった。
新規感染者数は10月中ごろから徐々に増え始め、11月ごろにはグラフの傾きが明らかに急になっている。このペースで感染者数が増えると、今月12日時点で東京で約3万3千人、大阪で約1万4千人、神奈川で約9700人だった累計感染者数が、1月上旬には東京で6万人、大阪で3万人、神奈川でも2万人を大きく超えると予測される。東京では新規感染者数が1日600人、大阪でも500人を連日超える深刻な状況に陥る可能性がある。
「NTTドコモなどが公表している各地の人の増減を表すデータを見ても、人々の行動量は大きく減っていない。欧州でも寒くなり始めてから一気に新規感染者数が増えた。日本でも1日の新規感染者数が全国で1万人を超える事態もあり得る。しかし、いま行動を見直すことで未来は変えることができる」(佐藤教授)
一方で、明るいニュースとして注目を集めるのはワクチン開発の進展だ。米国製薬大手ファイザーが進めるワクチン開発の中間報告で、感染を防ぐ有効率が90%を超えたと発表された。順調にいけば米国内では年内に流通が始まる予定だ。
■期待のワクチン 安全性に疑問符
日本政府はワクチンを2021年上半期までに6千万人分納入することでファイザーと合意しており、現在、日本でも治験が行われている。ただ、実際に使用が始まるのは早くとも来春とみられ、今冬の「第3波」への対応には間に合いそうもない。