「子どもが10歳ぐらいになれば手がかからなくなる。そのとき、『もう少し仕事を頑張ろう』と思える自分であることが大事。育児期の先へとつなげる両立を意識してほしい」(林田さん)

 懇談会に参加したオリックスの久米晴子さん(35)は第2子の育休中。夫は在宅勤務ができない仕事のため、家事分担は「以前とあまり変わらないと思う」としながらも、意欲を示す。

「育休中は仕事へのモチベーションが上がりづらいけど、今日の講義を聞き、復職後は上司にできないことだけでなく『こうすればできます』ということも伝えようと思いました」

■仕事と家事の二重負担

 オリックス銀行の小林奈央子さん(34)は、3月に出産後は外出を控え、家族以外とコミュニケーションを取る機会はほとんどなかったと言う。

「復職しても浦島太郎状態になりそうな不安がありますが、今回オンラインで情報交換ができ、少し気持ちが軽くなりました」

 さらに、もう一つの不安が保育園のことだという。

「新型コロナの影響で見学できず、立地やお迎え後に園を出てくる親子の雰囲気ぐらいしか判断材料がなくて困っています」

 林田さんによると、保活では保育園選びから夫を巻き込み、夫婦で情報の格差を作らないことも重要だという。

 関西大学の多賀太教授(教育社会学)は、こうしたコロナをきっかけとした働き方の変化について、

「男性はこれまで家事・育児をしたくても、外で長時間拘束され、物理的にできない人が多かった。だが、コロナを機に家にいる時間が増え、家事・育児を分担し、女性がそのぶん働くことができるようになった」

 と歓迎する。ただ、看護職や介護職、サービス業など女性が多い職種や業種は在宅勤務が難しく、営業やコンサルタント、マネジメントなど男性が多い職種や業種のほうがリモートワークをしやすいことや、女性の雇用労働者の半数以上が正規雇用と比べて在宅勤務が認められにくい非正規雇用であることから、「男は外で働き、女は家庭を切り盛り」という戦後からの性別役割分業が、なかには「女は外で、男は家で働く」という状況になっている家庭もあるという。

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