■背景美術で頭一つ抜ける京アニ
今回の『鬼滅の刃』ではじめてufotableという制作会社の名前を知った人も少なくないだろう。だが、他にも「特色」を持つアニメ制作会社はある。
そのひとつが、昨年放火事件で全国的に広く知られることになった、京都アニメーション(京アニ)だ。東京以外の地方に本拠地を置く先駆けといえる制作会社で、東京とデータで制作資料のやりとりをする必要性から、いち早くアニメ制作のデジタル化を取り入れた企業としても知られる。このデジタル技術をいち早く取り入れた背景美術の仕上げに定評があり、写実的な内容であることから、「聖地巡礼」と呼ばれるアニメの舞台を旅するムーブメントのきっかけを生み出したスタジオでもある。
今ではほとんど全てのアニメ制作会社がデジタルに移行しており、京アニとの技術格差は相対的に縮まったと言える。だが、見る人が特に背景を見れば、一目で「京アニ作品か」とわかるぐらいに頭一つ抜けた技術を今でも持ち続けている。また、地方に拠点を置くことから人材の移動が少なく、自社のスタッフでも監督兼脚本などができる人材を抱えているのが京アニの強みだ。
■「地方」に定評のあるP.A.WORKS
京アニに続く形で地方に拠点を置くアニメ制作会社がある。P.A.WORKSだ。富山県南砺市に本社を置き、京アニに続く形で数々の地方を舞台にしたアニメを生み出してきた制作会社だ。北陸を中心に地元から制作スタッフを採用し、新たな雇用創出にもつなげているのが特徴だ。一見普通のように見えるが、実はアニメ制作会社では異色のこととも言える。一般的なアニメ制作会社の場合、東京都西部に拠点を置き、大半の制作スタッフは個人事業主として業務請負の雇用関係を結ぶのが通例だからだ。この点、P.A.WORKSはアニメーターなども社員待遇で雇用することで知られる。
地方を舞台にした作品を単に作るだけでなく、その後の地方創生も視野に入れた社会的な取り組みをしているのも特徴だ。例えば2011年に放送され、金沢市湯涌温泉などが舞台になったアニメ『花咲くいろは』では、「ぼんぼり祭り」という架空のお祭りが登場するが、このお祭りを湯涌温泉協会と協働して現実の地域のお祭りにしてしまった実績がある。また、地元の南砺市を舞台にした2016放送のアニメ『サクラクエスト』に登場する架空の市「間野山市」と現実の南砺市を姉妹都市提携する取り組みにも関わっている。
P.A.WORKSの関連団体として「一般社団法人地域発新力研究支援センター(PARUS)」を2015年に設立しており、P.A.WORKSの持つ著作物をいかに地方創生などに役立てられるかの活動をしている。こうした団体をアニメ制作会社が持つのは他に例のないことだ。こうした取り組みから、P.A.WORKSはまさしく「地方」に定評のある制作会社と言って間違いないだろう。