今や社会現象となっている大ヒットアニメ『鬼滅の刃』。原作漫画の累計発行部数は10月時点で1億部を超え、10月16日に公開された映画『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』は、興行収入259億超えを記録(11月24日発表)。これで『アナと雪の女王』を抜いて、興収ランク歴代3位となった。このまま人気が続けば、歴代1位の『千と千尋の神隠し』(308億円)に迫りそうな勢いだ。
映画を鑑賞した人が声をそろえるのは、「戦闘シーンがとにかくすごかった」という感想だ。映画だけでなくテレビアニメの制作も担ったufotable(ユーフォーテーブル)は、原作の魅力をハイクオリティなアニメーションで再現し、「鬼滅ブーム」を牽引している。アニメ業界に詳しいライターの河嶌太郎氏にufotableの実力の秘密、その他の注目すべきアニメ制作会社について寄稿してもらった。
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漫画原作の作品がアニメ化された場合、通常は漫画の2話~4話ぐらいがテレビアニメ1話に相当する。一般的にアニメのほうが情報量が多いからだ。だが、アニメ『鬼滅の刃』の場合、漫画の第1話がそのままアニメ第1話として描かれている。漫画だと5分ぐらいで読めてしまう内容が1話24分に伸ばされており、原作にはない戦闘シーンの細かな動きや、原作には描かれていない登場人物の内面描写などが足されているのだ。こうした原作以上の情報量が詰め込まれているのが、アニメ『鬼滅の刃』ならではの魅力と言える。
■脚本からCGまで内製する職人集団ufotable
実は、ここがアニメを制作するufotableの強みといえる。映画もテレビアニメもスタッフロールを見てもらえばわかるが、脚本の名義がufotableと会社名になっているのだ。これはどういうことかというと、社内の制作スタッフがチームでシナリオを内製しているのだ。通常、脚本はフリーの脚本家に外注される場合が大半で、名義も個人名が入る。それができる複数の人材を社内に抱えているのがufotableの特徴だ。監督は外崎春雄氏で個人名義だが、外崎氏もufotable所属の社内スタッフだ。
また、特に戦闘シーンを支えるCGを自社で作れるのも強みのひとつだ。通常、CG描写は手描きのセルアニメとは作り方が全く異なり、ノウハウに乏しい老舗アニメ制作会社も少なくない。そのため、CGパートはCGを専門とするアニメ制作会社に外注することも珍しくない。ところがこの点でもufotableは自社に制作スタッフを抱えており、内製できるというわけなのだ。
この2つの要因が、原作以上に濃密な心情描写と戦闘描写を実現しており、ヒットにつながったと考える。他にも映像制作における大抵の専門スタッフが自社にいるのもufotableの特徴だ。