金正恩氏(左から二人目) (c)朝日新聞社 @@写禁
金正恩氏(左から二人目) (c)朝日新聞社 @@写禁
この記事の写真をすべて見る

 3回目の地下核実験を「成功」させた北朝鮮に対し、政府は2月12日、朝鮮総連の副議長5人を新たに北朝鮮への渡航制限対象に加える独自制裁を決めた。

 核戦争などという最悪の事態はなんとしてでも避けなければならない。そのために大切なのは外交の強化だ。北朝鮮の本音はどこにあるのか。内情に詳しいジャーナリストの石丸次郎氏はこう語る。

「核実験強行の背景には、金正恩が第1書記となった昨年4月以降、国内統治に失敗したことがあります。労働党幹部の間ですら正恩の評判は急落している。だからこそ、父・金正日の遺訓貫徹を掲げてロケットとミサイルと核実験の強行を続けてきたのです」

 内政最大の失敗は経済政策だ。父の死後、正恩氏は住民監視と統制を強化するために人々の移動を厳しく制限し、経済活動が著しく沈滞してしまった。また、軍隊や平壌市民のために、北朝鮮の大穀倉地帯である黄海南道で生産された食糧を無理に徴発したため、昨年4月から6月にかけて大飢饉が発生したという。

 北朝鮮の軍事力は、額面上は相当なものだが、装備の老朽化などで実戦では役に立たないものが多いとも指摘されている。だからこそ、核武装による一点突破で国内外に圧力をかける姿勢は、今後も続く公算大だ。

 日本を含む関係国は、経済制裁の強化などを軸に、北朝鮮封じ込めを目指す意向だが、核開発の抑止にどれぐらい効果があるかは未知数との指摘もある。まずは「撃たせない」ための一手を模索していくことが重要だ。

週刊朝日 2013年3月1日号