指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第46回は、コロナ禍で参加した競泳の国際水泳リーグ(ISL)について。
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競泳の国際水泳リーグ(ISL)に初参加した東京フロッグキングスは11月14、15日に開かれた準決勝1組で3位に終わりました。上位2チームによる決勝には進めませんでしたが、約1カ月間にわたって海外のトップ選手たちと2日間の試合を5試合行い、収穫の大きい大会でした。
新型コロナウイルスの感染拡大の中、海外のライバルの状態を知る機会でもありました。序盤はトレーニングが十分できていない選手もいると思って見ていました。試合を重ねていく中で、後半に調子を上げてくる選手が出てきました。
英国のエース、リオ五輪男子100メートル平泳ぎ金メダリストのアダム・ピーティーは、3試合目の100メートルで小関也朱篤に負けるなど予選リーグで精彩を欠いていました。調子が悪いのかと思っていたら、そうではなくて、4試合目を休んで調整すると準決勝の100メートルで55秒49の短水路世界新をたたき出しました。予選リーグは鍛錬の場として試合翌日も朝練、ウェートトレーニング、午後練とルーティンの練習をしっかりこなしていたようです。
強度の高い練習をしながら試合に出ているので、勝ったり負けたりする。だけど、ちゃんと調子を合わせると世界新が出せる。高い目標があるから、たとえ負けても日々のトレーニングをぶれずに続けられる。学ぶべき点だと思います。
日本の選手やコーチは勤勉で、きまじめすぎるというか、1戦1戦全力で挑んで成績が悪いと落ち込んじゃうところがあります。もうちょっと強弱があってもよかったなという気がしています。レースの翌日は休み、試合には疲れを取って臨まなきゃいけない。高いレベルを目指すなら、そんな固定観念をとっぱらう必要があるかもしれません。