コロナ禍の欧州、ハンガリーのブダペストで開かれた大会は感染防止策が徹底され、東京五輪の参考になります。バブルと呼ばれる、いわば多人数が隔離された環境を作り、その中で試合や練習が行われます。応援中もマスク着用。ホテルはドナウ川の島にあり、外出はマスクをつけて90分の制限付き。PCR検査は日本を出る前に1回、現地で8回、帰国してから1回の計10回。選手団からは一人の感染者も出ていません。
大会が実施できたのは、コロナ禍でも十分な対策を取ってスポーツを推進するハンガリーの国策があるからです。国の支援を受けて感染防止策を徹底すれば国際大会はできる。ただ、競泳だけでもこれだけ大変なので、けた違いの選手と関係者が集まる五輪を開くのは相当な覚悟が必要です。
東京五輪開催まで8カ月に迫った今、海外で試合をした選手が帰国後すぐに練習できる環境は不可欠です。ところが現状では帰国後2週間、味の素ナショナルトレーニングセンターで練習ができません。前述したバブルという感染防止策を徹底した環境で過ごした東京フロッグキングスのメンバーの中にも、帰国後の練習場所が見つからず困っている選手がいるのです。
感染予防を十分にした上で入国し、受け入れ先も予防策を継続する。ISLのような厳しい管理が実現できれば、日本でも帰国後の選手の練習環境が整備され、海外選手の受け入れも可能になると思います。(構成/本誌・堀井正明)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
※週刊朝日 2020年12月4日号