昔の日本のポップ・ミュージックが、海外で注目され始めて久しい。山下達郎、竹内まりや、細野晴臣、清水靖晃といったアーティストたちが1970~80年代に残してきた音楽の多くがここ数年、シティーポップの原点として、環境音楽やAORといった音楽の再評価と連動しながら、国内外で高く評価されている。
最近話題となっているのは、79年に発表された松原みきのデビューシングル「真夜中のドア」。発売から40年以上経過した今、サブスクリプションサービスのSpotifyで460万回、Apple Musicでは100万回以上再生されている。インドネシア、タイ、マレーシアといったアジア各国では、より多く再生されているというのも興味深い。
日本だけではないし、必ずしも古い音楽に限ったことでもない。今はアジアの新旧様々なポピュラー音楽が世界中で注目を集めている。特に、誰でも自由に動画や音源を投稿できるサイトが充実してからというもの、これまであまり表立って紹介されてこなかった国や地域のポップスの情報が、一気に世界中に拡散されるようになった。最近では日本の女子4人組バンド、CHAIもカバーした竹内まりやの「プラスティック・ラブ」(84年)はまさにそうしたネットミームで再評価された一曲と言える。また、韓国のオルタナティブ・ポップ・バンドのイナルチらは伝統的な芸能音楽であるパンソリを貪欲に取り込んでいる。
それでもまだまだ知られざる秘宝は世の中に多くある。アジアやアフリカ、ロシアまで……世界の多様な音楽をさらに深く楽しめるコンピレーション・アルバム「レイト・ナイト・テイルズ:クルアンビン」が12月4日、リリースされる。選曲したのはクルアンビンというアメリカ・テキサスを拠点とする3人組。フジロックフェスティバルにも昨年出場した人気の若手バンドだ。
クルアンビンは元々、タイのファンクやアフリカのブルーズのような音楽をガレージ・ロック・スタイルの演奏で聴かせるユニークなたたずまいが持ち味。そんな彼らが世界中の、わけてもアジアの音楽を多くチョイスしているのが「レイト・ナイト・テイルズ:クルアンビン」だ。マニアックという言葉も軽く越えるほどディープな選曲には、ただ舌を巻く。