新型コロナウイルスの感染拡大が長引く中、女性の自殺者が増えている。不安定な雇用や感染予防のための孤立化が女性たちを追い詰めている。AERA 2020年12月21日号から。
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過去10年連続で減少していた国内の自殺者数。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、その潮流に異変が起きた。今年4~6月は例年より少ない傾向だった。だが、7月から例年並みになり、さらに10月には前年同月比で619人増の2158人になった。特に女性の増加が著しく、前年同月と比べて7~9月は1.2~1.4倍、10月は1.8倍にまで増えている。
死に追い込まれた理由は定かでないが、調査データや相談窓口に寄せられた声などからは女性の厳しい状況が浮かび上がる。
■非正規の女性を直撃
総務省の労働力調査では、10月の正規雇用者は前年同月と比べて9万人増えたが、非正規雇用で働く人は85万人減った。うち、女性は53万人。過去に自殺者が急増した1998年は、大手金融機関が破綻して正社員の男性が影響を受けたが、コロナは非正規雇用の女性を直撃した。
また、経済不安やコロナによる自粛で、家庭内のストレスも増えている。介護サービスの利用控えや障害のある子どもの療育機会が減らされる中で、しわ寄せは介護や子育てなどを主に担う女性に向かっている。家庭内暴力も深刻化し、自治体が運営する全国の配偶者暴力相談支援センターと内閣府が運営する「DV相談プラス」に寄せられた相談件数は、5、6月は前年同期比で約1.6倍、7、8月も1.4倍となった。
厚生労働大臣指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」によると、「同居人がいる女性」と「無職の女性」が全体の自殺死亡率を押し上げている。相談窓口には、配偶者と暮らす女性から「コロナでパートの仕事がなくなり、夫に『怠けるな』と毎日怒鳴られる。こんな生活が続くならもう消えてしまいたい」との声や、シングルマザーの女性から「子どもが発達障害で子育てが大変なのに、ママ友とも会えず、実家にも帰れない。死んで楽になりたい」という相談が寄せられるという。清水康之代表理事は女性が追いつめられている背景をこう説明する。