五輪に向けて役者がそろってきました。この大会単独で考えると記録的にもの足りないところはありますが、春から大会の中止が続いてレースの経験が少なかった上、12月という開催時期を考えると、十分頑張ってくれたと思います。
私が指導する萩野公介は男子個人メドレーで2種目に優勝しました。400メートルより200メートルのほうが内容がよかった。ISLも含めて夏場からタイムトライアルをたくさんやってきて、持久力よりもスピードを強化してレースに向かっていく気持ちを確認しながらやってきました。ようやくスタートラインに立ったという感じがしています。
五輪の日本代表は、来年4月の日本選手権で選考されます。個人種目は2位に入って、派遣標準記録を切ることが条件です。一人でも多くの選手に派遣標準記録を突破してもらいたいし、日本代表チーム全体でいうと、五輪のリレー種目のためにも自由形の選手の強化が不可欠です。
日本選手権を終えて8週間後の来年2月にジャパンオープンがあり、その8週間後が五輪代表選考会を兼ねた日本選手権です。8週間ごとのサイクルでステップアップを目指します。合宿を通してコーチ同士の情報共有も進め、日本代表チームのレベルアップにつなげていきたいと思います。
(構成/本誌・堀井正明)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
※週刊朝日 2020年12月25日号