日々の食事からご飯やパンなど炭水化物を抜いて糖質摂取を減らし、「肥満が気になるおじさんもカロリー計算を気にせず簡単に痩せられる」と大ブームの「糖質制限ダイエット」。書店には関連本がいくつも並び、熱狂は老若男女に広がっている。

 が、京都市内で内科クリニックを開業する糖尿病専門医の梶山静夫さんは警告する。

「主食を極端に控えるダイエットを続けることには問題があります。確かに糖質制限すれば血糖値は下がり、体重は減る。しかし、極端に走れば栄養失調になり、カロリー不足を補うため脂肪、たんぱく質まで燃やしてしまう。筋肉まで減っていく。元気がなくなり、命に関わる問題になりかねない」

 日本糖尿病学会は昨年7月、「極端な糖質制限は健康被害をもたらす危険がある」との見解を示してもいる。

 その梶山さんが提唱するのは「食べる順番療法」。まず野菜から食べ、次に肉や魚などのおかず(たんぱく質)に移り、最後にご飯など主食(炭水化物)で終えるやり方だ。

「最後に食べるので、どうしてもご飯を食べる量が減ります。ダイエットは無理しないのが一番いいのです。野菜に含まれる食物繊維には、もともと、炭水化物から分解されたブドウ糖の吸収を緩やかにする効果がありますが、野菜を最初に食べると、その効果がさらに高まります。そうすると食後、血糖値が急に上がらなくなるわけです」

 なるほど…。

「炭水化物をとると太るなんて根本から誤ってますよ。炭水化物を悪者にしてるだけ。日本人はおコメとともに生きてきた長い歴史があるんです」

 と一刀両断するのは高知市在住の安岡冨士子さんだ。肌がツルツルの70歳。東洋栄養学の立場から日本人の食生活に提言を続けるNPO法人・日本綜合医学会(本部・東京)副理事長。

「ご飯も、うどんも、丸のみするから血糖値が上がるんです。丸のみ・早食いが一番悪い。とにかくよく噛むこと。噛んで、噛んで。そうすれば唾液で分解され、きちんと消化されていく。変に太るなんてことない。食が滅べば国滅ぶ、ですよ」

AERA 2013年3月18日号