菅義偉首相が「辺野古移設が唯一の解決策」と強調している沖縄の米軍基地問題。ジャーナリストの田原総一朗氏は、この問題の決着を図るには日米地位協定を改定すべきだと考えている。
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沖縄・辺野古新基地建設の工事は民意を踏みにじったまま進み、12月14日で土砂投入から2年が過ぎた。来年9月までに予定面積の4分の1の埋め立てを終える計画だ。だが、投入された土砂の量は、11月末時点で4%に満たない。水深が深く、「マヨネーズ並み」とされる軟弱地盤が広がる海域が手つかずだからだ。国の試算でも完工までに12年、1兆円近い費用が見込まれる。米国の著名なシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は11月に発表した報告書で、「完成する可能性は低い」と分析している。
“辺野古の新基地計画は本当に理にかなうものなのか”(12月15日付朝日新聞社説)
菅義偉首相が「辺野古移設が唯一の解決策だ」と繰り返し強調していることに対する強い批判だが、実は、私は2019年春に、安倍晋三首相(当時)に「日米地位協定を何としても改定すべきで、それをやらないと沖縄問題は決着しない」と強く求め、安倍首相は「やります」と言い切った。沖縄問題で「政府は沖縄県民の願いを無視している」と強く批判している野党もマスメディアも、なぜか日米地位協定については触れない。
日米地位協定は言ってみれば、米国による占領政策の延長である。それを示す例として、現在でも東京と沖縄本島の上空はすべて米軍に支配されている。たとえば那覇空港に着陸するときは、30キロ以上手前から高度300メートル以下で飛ばなければならず、東京の場合も、JALやANAの定期便は、米軍支配の巨大な山脈のような空域を避けて、非常に不自然なルートを飛ぶことを強いられている。
私が強い衝撃を受けたのは、10年春、当時の鳩山由紀夫首相が辞任せざるを得ない事件が起きたことだ。鳩山首相は普天間米軍飛行場の辺野古移設に強く反対していて、「最低でも県外」と主張し、移設先として徳之島(鹿児島県)を考えていた。そこで、同年4月6日に外務省、防衛省の幹部を首相官邸に呼んだ秘密会合で「徳之島移設案」を示したところ、翌日の朝日新聞の夕刊1面で、そのことがリークされた。幹部たちが「徳之島案」をぶち壊すためにリークしたのである。