ヘタなのに面白い。日本独特のこの価値観について、『へタウマ文化論』(岩波新書)の著者である山藤章二さんと、顔面模写でもおなじみのイラストレーター・南伸坊さんが語り合った。
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南:たしかに「ヘタウマ」流行ってますけど、僕は昔から日本人はへタウマの魅力をわかる感性を持っていたと思います。例えば、焼き物なんかにしても、ふつうの人が、ゆがんでるのを「味がある」とかって喜びますよね。
山藤:本来はマイナスの要素であるヘタをプラスに評価する文化があると。
南:ええ。愛嬌(あいきょう)ですかね。カワイイ魅力だと思います。へタウマの良さって。ちょっと抜けてるみたいなのがいいとか……。(笑い)
山藤:いまだにドラマとかで、名工が失敗して「えーい!」と器をたたき割るシーンがありますけど、あれ、本当にやってんのかな(笑い)。今だと、これはこれで面白いという価値観が優先しているかもしれない。もしそうだとすると、頑固に伝統美を継承する流れがすたれてしまうんじゃないか、と心配しちゃうんですけど。
南:アハハ。日本民藝館に中世に描かれた「築島物語絵巻」っていう御伽草子(おとぎぞうし)が所蔵されているんですが、これがユルユルで、線はそれなりに慣れてるんですが、絵はもう笑っちゃうくらいへタですごくカワイイ。
山藤:ゆるキャラの流行は、刺激に満ちた現代社会が癒やしを求めた結果かと思っていたけれども、昔からそういうものを支持する土壌はあったんですね。
※週刊朝日 2013年3月22日号