2019年、ブルーリボン賞、報知映画賞の主演男優賞を、「記憶にございません!」で首相を演じた中井貴一が受賞した。
中井は安倍晋三・前首相と同じ成蹊大OBで、父親と同じ仕事に就いたという共通項がある。スポーツ紙でこう話していた。
「先輩、僕、総理をやっておりまして、ぜひご覧になってくださいと言ったら『ちょうど見たいと思っていたんですよ』と。(略)感想は聞いていませんが『(冗談で)記憶にございません』って言ったようなので、今度会ったらそう言われるんでしょうね」(「スポーツ報知」19年9月13日)
映画では「中井」首相の支持率が2.3%と描かれている。
俳優の出身大学は、かつて、「日芸」こと芸術学部が看板の日本大や、学内で演劇サークルが盛んな早稲田大が多かった。昨今では、大阪芸術大が個性派俳優を送り出している。筧利夫、木下ほうか、時任三郎、古田新太、橋本じゅん、渡辺いっけい、羽野晶紀、藤吉久美子などである。明治大からは若手俳優が生まれている。前出の井上真央のほか、原田夏希、北川景子、山本美月、川島海荷、向井理、山下智久などだ。
テレビ、映画、舞台で活躍する俳優の出身校は近年、バラエティーに富むようになった。
若手では、賀来賢人(青山学院大)、竹内涼真(立正大)、吉岡里帆(京都橘大)など。バイプレーヤーとして存在感たっぷりな俳優には、吉田鋼太郎(上智大)、佐藤二朗(信州大)、ムロツヨシ(東京理科大)、佐々木蔵之介(神戸大)、松重豊(明治大)、西村まさ彦(東洋大)、岸谷五朗(中央大)、鈴木浩介(青山学院大)などがいる。
俳優と出身大学に関係を見いだすことはできるだろうか。
大ヒットドラマ「半沢直樹」(TBS)に出演した堺雅人と北大路欣也は早稲田大であり、ともに学生時代から舞台経験が豊富だ。賀来賢人は青山学院大、及川光博は成城大で、いずれもおぼっちゃん風といえるかもしれない。東京大の香川照之は、役柄から「頭が切れそう」というイメージもあるだろうか。
大学が俳優のカラーを作るのか。俳優が大学のカラーを作るのか。OBOGの俳優がどう活躍するかは、大学のイメージにも多少影響してくる。朝ドラ出演率の高さで、慶應義塾大は得をしているかもしれない。
※文中敬称略、出身者は中退を含む
(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)
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