杉村 彼女も含め、社会人向け語学コーチングスクールのコーチ職は平日夜や土日がメインの就業となります。彼女が育休をとっていた13年の頃、社員の多くがライフイベントを迎えることが予想されました。当社は20数名規模の中小企業ですから、出産を機に辞めずにキャリアを積んでもらえるよう就業規則を変更しました。

 社員らと議論し、正社員は週5日勤務で1日4時間からの時短勤務を可能とする制度を新設しました。週5日勤務が難しければ、「契約社員(1年更新)は、本人が希望する場合は正社員への契約再変更が前提」として週3日からの契約社員に変更できるようにしました。

 彼女は復帰する時に保育園が決まらず、ベビーシッターや認可外保育園の利用を希望せず、夫や実家のサポートもない状態でした。当初、退職する意向だったのを留意したところ、自ら最も短い勤務の週3日、1日4時間の契約社員で職場復帰しました。それが「契約社員になるよう強要した」「マミートラックだ」となってしまいました。

―― 高裁判決ではJBL社にマタハラはなく、女性は自由意思で契約社員になり、会社との間に雇用関係はないと証明されました。高裁の阿部潤裁判長は19年11月、雇い止めが有効だという主な理由を「情報漏洩を防止するため禁止された執務室内での録音行為をやめなかったこと」、「マスコミに事実と異なることを伝え、マタハラ企業との印象を与えようとして会社との信頼関係を破壊する背信行為で会社の名誉を棄損。かつ反省の念を示していない」だと言い渡しました。高裁判決が確定し、7年もの”マタハラ紛争”が終わりました。

杉村 ようやく司法の最終判断が出て、深く安堵しました。ただ、完璧でなくても当時は画期的だと思って法を超えての柔軟な働き方を作ったことが今回のような裁判に発展してしまい、残念です。

―― 原告は「保育園が決まったから正社員に戻してほしい」と繰り返し、主張していました。しかし、実は保育園の入園申請すらしていなかったという新証拠が見つかって原告の”嘘”が明らかになりました。これで裁判の流れが変わりました。高裁判決は「保育園の申し込みをしていないことを秘して交渉し、不誠実な態度に終始した」と言及しました。

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