ジャパンビジネスラボ(JBL)の杉村貴子社長(46)。撮影・高野楓菜(写真部)
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ジャパンビジネスラボ(JBL)の杉村貴子社長(46)。撮影・高野楓菜(写真部)
1コマ2時間半のクラスを終え、あるコーチは「自分の限界に挑戦しようと受講する人が多く、エネルギーとエネルギーのぶつかり合い。授業を終えたあとは陸上の試合を走り切った感覚になるくらい、やりがいある仕事です」と語った。撮影・大野洋介
1コマ2時間半のクラスを終え、あるコーチは「自分の限界に挑戦しようと受講する人が多く、エネルギーとエネルギーのぶつかり合い。授業を終えたあとは陸上の試合を走り切った感覚になるくらい、やりがいある仕事です」と語った。撮影・大野洋介

 そもそも裁判が起こったのは、女性の“嘘”がきっかけだった――。

 語学スクールを運営するジャパンビジネスラボ(JBL)で働いていた女性(39)が会社からマタニティハラスメントにあったと訴え、注目を集めた裁判が終結した。

 女性は育児休業後に正社員から契約社員になり、期間満了となったが、これを不服として女性が正社員の地位や雇い止め無効を求めてJBL社を相手どって提訴。一審で雇い止めは無効とされたが、控訴審で「雇い止めになるには理由があった」と、2019年11月に女性が逆転敗訴した。女性は上告したが2020年12月8日、最高裁判所はその訴えを退け棄却。訴えられたJBL社の逆転勝利となった。

 「ブラック企業大賞」にもノミネートされ、一時は業績悪化に陥った同社の杉村貴子社長(46)が苦しい裁判の“真実”を語った。

***

―― まずは裁判の経緯を振り返りたいと思います。原告の女性は、08年にJBL社に入社。社会人向けの語学スクールのコーチ職として育児休業を取得する第1号となりました。13年、都内で出産。1年の育休中に預ける保育園がなく、育休を半年延長しました。女性は自ら希望して会社の新たな制度を利用し、土日と平日に1日の週3日、1日4時間勤務の契約社員として復帰。復帰した数日後、「保育園が見つかったので正社員に戻りたい」と要望。しかしクラスのスケジュール調整などもあり、すぐには叶いませんでした。

 すると女性は、個人で労働組合に加入して「保育園が決まったのだから正社員に戻して」と交渉。その過程で、禁止された執務室内での録音行為、マスコミ取材に「退職を迫られ、社を挙げたマタハラ」「保育園が決まったが正社員に戻すことを渋った」など事実と異なることを話したことが発覚しました。それらの行為をやめなかったため、女性は期間満了となりました。女性は雇止めになったのはマタニティハラスメントに当たるとし会社を提訴し、マタハラ裁判が起こりました。

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小林美希

小林美希

小林美希(こばやし・みき)/1975年茨城県生まれ。神戸大法学部卒業後、株式新聞社、毎日新聞社『エコノミスト』編集部記者を経て、2007年からフリーのジャーナリスト。13年、「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。近著に『ルポ 中年フリーター 「働けない働き盛り」の貧困』(NHK出版新書)、『ルポ 保育格差』(岩波新書)

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7年の“マタハラ裁判”が終結