放送作家の鈴木おさむさん
放送作家の鈴木おさむさん
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 放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、年末に読んだ一冊の本について。期待をいい意味で裏切る内容だったという。

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 柳澤健さんというノンフィクション作家さんがいて、僕はこの方の本が大好きです。プロレス・格闘技系の本が多いのですが、「1976年のアントニオ猪木」「1985年のクラッシュギャルズ」「1984年のUWF」などなど、年代をタイトルの最初につけるのが特徴。情報の整理力と、その時々に起きた事件を間近で見ているかのように思わせる文章に、何度も興奮させられました。

 この方が昨年末に「2016年の週刊文春」という本を書いたと言うのだから、興味を持つに決まっています。

 この柳澤さんが元々文藝春秋社の社員であり、自分の目で見てきたことも書いているというから、見る前から期待値が上がりまくる。

 2016年と言えば「週刊文春」がスクープを連発した年。甘利大臣、ベッキー、などなど、世の中のワイドショーは文春砲をきっかけに動いた年。

 読む前は、2016年のあの様々なスクープの裏側が読めるのかなとか思っていたんですが、そんな甘っちょろいものではなかった。

 文藝春秋社の成り立ちから、出版してきた雑誌の誕生、廃刊の裏側も。

 そして80年代からの週刊文春の衝撃のスクープ。裏話なんて言葉では片づけられない衝撃の事件とその裏で起きていたこと。社長の家が銃撃された話なんて、背筋が凍る。

 僕が個人的に熱くなったのは、「女子高生コンクリート詰め殺人事件」を実名報道に至るまでの経緯。伝えるとは何か?法律って何なのか?思わず読んでいて、決断を下した編集長の気持ちになり、思わず拳を握り締めてしまう。

 今、「週刊文春」というと、世の中の人は、芸能スクープのことを思い浮かべる人も少なくはないだろう。が、読んで思い出すのは、世の中を変えた週刊文春の政治家のスクープの数々。政治家のスクープを取材し、掲載することがどれだけの努力と覚悟がいることかと思いしらされる。

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