■実はネットは紙よりも規制が厳しい

 しかし、マキエさんは「パンチラ写真」の撮影に難儀する。最も苦戦したのはパンツの見え方。脚の開き方や組み具合によって、見えるパンツの面積が変わってくるのだが、ファインダーをのぞきながら自分で確認することができないのが自撮りのつらいところ。見せているのではなく、見えている感じが欲しい。マキエさんは夫にモデルになってもらって構図やポーズを決めた上で、自分が被写体となってシャッターを切っているが、夫にはマキエさんの望むパンツの面積や角度のイメージがなかなか伝わらず、撮影中にケンカになったという。

「神社の階段でワンピース姿の私がイチゴ柄のパンツを見せている写真があるんですけど、夫とケンカしたのはこの時です。もうちょっと足を閉じればよかったんですけど、この時は自撮りの限界を感じましたね……」(マキエさん)

 さまざまな苦労の末、三和系のエロ本を彷彿とさせる『マキエマキ 2nd 似非』が完成した。ページをめくる瞬間、見てはいけないものを見ようとしている背徳感でいっぱいになる。写真は熟女の色気にあふれていて、きわどいものも多いのだが、いかにもエロ本にありそうなキャッチコピーや文章と一緒に見ることで、くすくすと笑いがこみ上げてくる。そこには、マキエさんと松村さんの“化学反応”によって、劣情をそそるエロ本と女が自分のやりたいように振る舞う自由さがきちんと共存していた。

「今はネットでいろんな写真が見られますが、圧倒的な背徳感は紙ならでは。出版する側は猥褻物に抵触しないようにギリギリのところを攻めてきますし、買う側も手に入れるまでの苦労も相まって、思い入れが強くなる。作り手と読み手によるイケナイことの共有が、エロ本をさらにいやらしいものにしています。昭和のエロがすごくエロく感じられるのは、その相乗効果あってのものだと思うんです」(松村さん)

「ネットは何でもあるようでいて、実は紙よりも規制が厳しいんです。私もSNSに作品を投稿してアカウントを停止されたことがあります。でも、紙だと、ネットでは規制されそうな作品も出せますし、写真の並べ方によって流れで作品を見せることができます。こういうのは紙にしかできない良さですよね」(マキエさん)

 ここでぜひ、『マキエマキ 2nd 似非』に収録されている、背徳感に満ちたマキエさん流の“昭和のエロ”を披露したいところだが、残念ながらインターネット上でお見せできるものには限度がある。ネット書店でも購入することができるが、恥ずかしい気持ちを抱きつつ、街なかの書店で購入してみてほしい。そうすれば、さらにこの作品の世界観を堪能することができるはずだ。

                         (文:吉川明子)

マキエマキ
1966年大阪生まれ。1993年よりフリーランスの商業カメラマンとして雑誌、広告などでの活動を始める。2015年に「愛とエロス」をテーマにしたグループ展に出展したことで、自撮り写真に目覚める。その後、「自撮り人妻熟女写真家」として作品を発表し続けている。『第5回 東京女子エロ画祭グランプリ』受賞。写真集『マキエマキ』『マキエマキ 2nd 似非』を出版。