作家・室井佑月氏は、今が時代の転換期にあるとして、行き過ぎた資本主義からの脱却に期待を寄せる。
* * *
あけましておめでとうございます。といっても、このコラムを書いているのはクリスマス前。それに、お正月になっても巷(ちまた)がおめでたい感じなのかどうかわからない。
2020年、正直いってあたしは疲れました。できるだけ真っすぐに正しいことをいっていこうと思ってますが、この国で真っすぐに正しいことをいうのは、もはや勇気のいることです。
権力=正義と思い込んでいる人たちからすれば、あたしが異分子になるわけで、相当に叩(たた)かれます。いいえ、権力=正義と思っていない人でも、権力に盾をつかないことが大人な態度と思い込んでいる人がいて、そういう人たちこそ自分たちの社会から異分子を排除したくなるのでしょう。とにかく、とても生きづらいです。
でも、あたしはこんな世の中がつづくことはないと信じてる。人には知性があるし、心がある。今は時代の転換期で、行き過ぎた資本主義社会から、人を大事にできる社会へと変わってゆくのではないだろうか。
しかし、きっと歴史の教科書を読むようにはならない。転換期もたぶん長いのだ。願うことなら生きているうちに、世の中の変化を味わいたいけど、そこまで望むまい。21年も、あたしはあたしにできることをしていくつもり。
弱気になっている自分のためにも、改めて書いておくわ。権力に盾つかないことが大人の態度ではない! 大人とは、自分の意見を持っている人のことだ。弱者に優しくできる人のことだ。
そして、今だけだ、権力=正義のようになっているのは!
今の政府は、正義なんて関係なく、事実さえも無視して、自分たちの都合ばかりだ。恫喝(どうかつ)でマスコミを抑え、人事権で官僚を黙らせて。彼らが考えているのは、次の選挙や、自分たちのヒエラルキーのことだけだろう。
けれど、それがいつまで通用するだろう。たとえば、新型コロナウイルスが彼らに忖度(そんたく)してくれるとは思えない。そして、力で押さえつけていた者は、力が削(そ)がれてきたら、ころっと裏切るのだ。
コロナの感染拡大防止に向け政府がいっていた「勝負の3週間」とやらは、感染者数が急増し、12月16日に負けが確定した。マスコミも勝ったとは報じられまい。
専門家たちが早くから「冬になれば感染は拡大する恐れがある」といっていたというのに、政府は本来、コロナが収まってからやるはずであった、利権がらみの「Go To キャンペーン」をなにがなんでも推し進め、感染拡大の防止や、医療体制を守るための政策に力を注がなかった。
こういったことに対し、責任を感じない人が政治家でいるべきじゃない。21年は総選挙がある。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2021年1月15日号