そのWBAを見てみよう。

 まず存在するのが、いわゆる“フツー”の世界王者である「正規王座」である。

 次は「スーパー王座」。正規王者が別の団体の王座を獲得したり長期防衛を果たすと、「スーパー王者」に認定される。その際、正規王座は空位となり、誰かがそのイスを争うことになる。

 また、正規王者がケガなどでタイトルマッチを行えない場合は、「暫定王座」が設けられ、ランキング上位者で決定戦を行う。「暫定」とはつくが、これもれっきとした「世界王者」で、チャンピオンベルトもちゃんと贈られ防衛戦を行うことができる。

 一見、理由付けはされているようにみえるが、実態はかなりひどいという。

「正規王者がケガをしていないのに暫定王者決定戦が行われたり、村田もそうですが、他団体の王座を獲ってもいないし、長期の連続防衛も果たしていないのにスーパー王者に認定される例が相次いでいます。WBAの裁量で王者が乱造され、やりたい放題になっているのが現実です」(同)

 だが、これでもまだ話は終わらない。

 2012年には、WBAスーパーフライ級の世界王者となった清水智信氏が、ケガを理由に、タイトル獲得の約2カ月後にWBAから一方的に「休養王者」とされた。そして暫定王者が正規王者に昇格し、さらに新たな暫定王者が生まれた。この「休養王者」もWBAの裁量ひとつである。

「スーパー」「正規」「暫定」「休養」……下手をするとWBAには同一階級で4人の世界王者が君臨することになる。現在も多くの回級で3人の王者が乱立しているのだから、あり得ない話ではない。

 日本ボクシングコミッション(JBC)は、すでにWBAの暫定王座は世界王者と認めない姿勢を打ち出しているが、問題はあまりに根深い。

 帝拳ジムは、公式サイトで村田の談話を紹介した。

《コロナ禍の影響もあり試合が出来ない期間が続いているなかでのニュースに不思議な気持ちもありますが、他団体王者との統一戦も可能性が広がったとポジティブに捉えて、嬉しく思います。スーパーチャンピオンの名に恥じないようにこれからも精進します》

 名だたる強敵を倒して肩書きに箔をつけ、WBAの“軽さ”を吹き飛ばしてほしい。(AERAdot.編集部)